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労務安全情報センター[ブログ]

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裁判例の記事一覧

自賠責〜政府の求償額と被害者未塡補損害の競合で「被害者優先すべき」(最高裁)

2018.10.10
自賠責〜
政府の求償額と被害者未塡補損害の競合で
「被害者優先すべき」(最高裁)



 被害者の男性は2013年、仕事でトラックを運転中に軽自動車と衝突し、後遺障害が残った。労災保険から計約908万円の給付を受けたが、なお損害が残っているとして、加害者が自賠責保険に加入していた東京海上日動火災保険に対し、約580万円の支払いを求めて提訴していた事案。

 最高際第一小法廷は、2018.9.27判決で、「被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害(以下「未塡補損害」という。)について直接請求権を行使する場合は,他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され,被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は,国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である。」と判示して、保険金344万円を被害者に支払うよう命じた二審、東京高裁の判断を維持した。(遅延損害金の算定についての審理を同高裁に差し戻し)。


[編注、コメント]

 従来、被害者と政府の請求額の合計が加害者の自賠責保険の保険金を超える場合、保険会社はそれぞれの請求額に応じて保険金を案分する運用をしてきたが、取扱変更が必要となる。
(判決文は最高裁URL)を直接参照してください。
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/011/088011_hanrei.pdf



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労働契約法20条正社員と有期契約社員との処遇格差をめぐる最高裁判決

2018.06.16
2018.6.1、労働契約期間の定めの有無による不合理な労働条件格差を禁じた労働契約法20条の判断をめぐって争われた2事件に対する最高裁判決が示された。
以下は、2事件の判決概要です


1 長澤運輸事件
 (正社員と職務内容が同じ定年後再雇用者に対する賃金・賞与格差の違法性が争われた事件)

最高裁第二小法廷
判決のポイント


1) 事業主は,高年齢者雇用安定法により,60歳を超えた高年齢者の雇用確保措置を義務付けられており,定年退職した高年齢者の継続雇用に伴う賃金コストの無制限な増大を回避する必要があること等を考慮すると,定年退職後の継続雇用における賃金を定年退職時より引き下げること自体が不合理であるとはいえない。また, 定年退職後の継続雇用において職務内容やその変更の範囲等が変わらないまま相当程度賃金を引き下げることは広く行われており,被上告人が嘱託乗務員について正社員との賃金の差額を縮める努力をしたこと等からすれば,上告人らの賃金が定年退職前より2割前後減額されたことをもって直ちに不合理であるとはいえず,嘱託乗務員と正社員との賃金に関する労働条件の相違が労働契約法20条に違反するということはできない。

2) 労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断する際に考慮する事情として,「その他の事情」を挙げているところ,その内容を職務内容及び変更範囲に関連する事情に限定すべき理由は見当たらない。有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは,労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たると解するのが相当である。

3) 有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては,両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく,当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である。

最高裁判決文
→ http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87785





2 ハマキョウレックス事件
 (正社員と職務内容が同じ契約社員に対する諸手当の格差について違法性が争われた事件)

最高裁第二小法廷
判決のポイント


1 労働契約法20条は,労働条件の相違が同条に違反する場合であっても,同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではない。

2 同条にいう「期間の定めがあることにより」とは,労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当である。

3 個別手当の判断においては以下の判決
  イ 契約社員に対して不支給または支給格差が設けられていた無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当について不合理な労働条件の相違とした高裁判決を支持。
  ロ 高裁判決で棄却された皆勤手当の格差について、最高裁は「出勤する者を確保することの必要性については、職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではない」として不合理な格差と認定。

最高裁判決文
→ http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87784


[編注、コメント]

 「高年齢者雇用安定法」が施行され、雇用社会において(雇用優先、処遇任意の大枠方針が)先行実施されている中での最高裁判決であるから、当該法律の違法性に踏み込むことはできず、(言ってみれば)最高裁らしい判決だ。

 全体としての処遇差については不合理性を認めないとする前提の元で、各手当については、
 正社員と有期契約社員で、当該手当を個別に判断して、支給理由や趣旨から両者の間に差異を設ける理由がないようなものは、「不合理」とする判断する。
 波風の立たない最高裁判決であった。



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「イビデンセクハラ対応事件」親会社に信義則違反はない!(最高裁)

2018.04.12
「イビデンセクハラ対応事件」
親会社に信義則違反はない!
(最高裁)


判決日 平成30年2月15日
事件 イビデンセクハラ対応損害賠償請求事件
事件番号 平成28(受)2076
最高裁第一小法廷


(事実関係)
被上告人(被害者)は、イビデン㈱(親会者)の子会社㈱イビデン・キャリアテクノ(勤務先会社)の契約社員として、同じ事業場内で就労していた他の子会社の従業員(加害者)から、繰り返し交際を要求され、自宅に押し掛けられるなどしたことにつき、勤務先会社の上司に被害相談をしたが、何らの措置も講じてくれないことから、勤務先会社を退職した。
(なお)、被害者の退職後も加害者の付きまとい行為が続いたことから、被害者の元同僚で勤務先会社に勤務する契約社員が、親会社の相談窓口に対し、被害者及び加害者から事実確認等の対応をしてもらいたいと依頼した。
これに対して、親会社では、子会社を介して加害者の聞き取り調査は行ったが、子会社から事実が存在しないとの報告を受けたことを踏まえて、被害者に対する事実確認を行わなかった。
親会社の対応について、信義則上の義務違反の有無が争われた。



(最高裁判決のポイント)
→ 破棄自判、親会社が逆転勝訴

彼上告人は(勤務先会社に雇用されその指揮命令の下で労務を提供していたというのであり、)上告人が彼上告人に対し指揮命令権を行使する立場にあったとか、被上告人から実質的に労務の提供を受ける関係にあったとみるべき事情はない。
以上によれば、・・・勤務先会社が本件付随義務に基づく対応を怠ったことのみをもって、親会社の被害者に対する信義則上の義務違反があったものとすることはできない。
もっとも、

親会社上告人には、「本件グループ会社の事業場内で就労した際に、法令等違反行為によって被害を受けた従業員等が、本件相談窓口に対しその旨の相談の申出をすれば、上告人は、相応の対応をするよう努めることが想定されていた(から)、・・申出の具体的状況いかんによっては、当該申出をした者に対し、当該申出を受け、体制として整備された仕組みの内容、当該申出に係る相談の内容等に応じて適切に対応すべき信義則上の義務を負う場合があると解される。」
しかし、本件は結論として、(在職中の行為は相談申立をしておらず、)また、申立のされた退職後の行為は、被上告人が既に退職し加害者と同じ職場では就労しておらず、行為から8ヶ月以上が経過していたことから、上告人の信義則の義務違反が否定されるところとなったもの。


[編注、コメント]

親会社が子会社及び被害者に対し、「指揮命令権を行使する立場にあったとか、被上告人から実質的に労務の提供を受ける関係にあったとみるべき事情はない。」と認定した以上、関連義務違反は生じない、という結論になる。
むしろ、本件では、最高裁が、「(本件)申出の具体的状況いかんによっては、当該申出をした者に対し、当該申出を受け、体制として整備された仕組みの内容、当該申出に係る相談の内容等に応じて適切に対応すべき信義則上の義務を負う場合があると解される。」と判示したことの方が注目される。



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家族介護が必要な従業員の転居伴う配転に無効判断

2018.03.05
家族介護が必要な従業員の
転居伴う配転に無効判断

2018年2月26日東京地裁判決


以下、朝日新聞、読売新聞、労働新聞の記事を元に要約しました。

 転居を伴う配置転換を命じられた後、休職したり適応障害を発症した労働者7人が、中小企業の保険業を行う一般財団法人あんしん財団(東京都新宿区)に対し慰謝料などを求めた訴訟で、東京地方裁判所(江原健志裁判長)は、2018年2月26日、7人のうち女性4人について人事権濫用を認めた。
 それぞれにつき慰謝料と弁護士費用計110万円の支払いを命じている。
 7人中女性4人は、平成27年3月埼玉支局から北海道支局など、転居を伴う配転を命じられた。4人は配転命令後、適応障害などを発症して休職。実際に配転に応じないまま、7月、配転命令は撤回された。
 就業規則には転居を伴う異動があることは明記されていたが、女性4人(独身)には介護が必要な家族がいた。
 判決は、「家族の介護など、個々の事情への配慮や丁寧な説明がなく、相当性を著しく欠いている」と指摘。「職員が受け入れるべき範囲を著しく超えた不利益を負わせており、違法」と結論付けた。


[編注、コメント]

これから家族介護を必要とする社員の転居を伴う配転が、人事政策上の課題になっていく可能性がある。
本件もその関連判決の一つ。



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定額残業制の取扱に関する最高裁判決と通達

2017.09.30
(定額残業制の取扱に関する最高裁判決と通達)

 高額年俸には残業代を含むとする合意があっても、「どの部分が時間外賃金にあたるかが明らかになっておらず、支払ったということはできない」

 2017.7.7の最高裁判決を受け、定額残業制の取扱に関する通達が発出されています。
 以下、通知本文(判決文省略)を掲載します。


 平成29年7月31日付け基発0731第27号「時間外労働等に対する割増賃金の解釈について」(厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あて「通知」)

(通知本文)
 割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含める方法で支払うことについて、平成29年7月7日付けで、最高裁判所第二小法廷において別添の判決が出された。
 名称によらず、一定時間分までの時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金として定額で支払われる賃金については、不適切な運用により、労働基準法上の問題が生じる事例も発生していることから、この判例を踏まえ解釈は下記のとおりとするので、監督指導等の実施にあたっては遺憾なきを期されたい。

                        記

 時間外労働等に対する割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含める方法で支払う場合には、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要であること。
 また、このとき、割増賃金に当たる部分の金額が労働基準法第37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、その差額を支払わなければならないこと


(以下「平成28年(受)第222号 地位確認等請求事件、平成29年7月7日 第二小法廷判決」掲載、=下記URLから直接ご確認ください。)


[編注、コメント]
判決要旨(参考)
最高裁判決20170707
( ↑ クリックすると拡大表示できます)



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