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労務安全情報センター[ブログ]

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裁判例の記事一覧

引っ越しのアートに、事故責任賠償金の返還を命ず(横浜地裁)

2020.07.07
朝日新聞 2020年6月25日記事

記事タイトル:「 引っ越しのアートに支払い命令 賃金天引きで横浜地裁」

記事本文:
「引っ越し大手「アートコーポレーション」(大阪市)の元従業員3人が、未払いの残業代の支払いや、作業で損害が生じた際の賠償費用として賃金から天引きされていた金額の返還を求めた訴訟で、横浜地裁(新谷晋司裁判長)は25日、(※編注:不当利得として返還を)同社に命じた。
 判決によれば、同社では引っ越し作業で損害が生じた場合に、作業リーダーが賠償する規程があったが、実際には事故の有無を問わず出勤1日につき500円が賃金から控除されるなどしていた(※)。判決は「規程に基づく賠償金とは到底認められない」と指摘し、全額の返還を命令。・・」


【編注、コメント】
(※)引越し事故責任倍賞制度
顧客に支払った損害賠償金を一定の限度で労働者に負担させる制度。
アルバイトリーダーが対象で、1件の事故について1人3万円が上限だった。しかし実際には、賠償金は名目で1回の勤務につき500円を賃金から控除していた。訴えで、3人は賃金から控除された計62万1000円の返還を求めたもの。
元従業員の当時の賃金は、正社員だった2人は月給で月18万から19万円。アルバイトの1人は時給1000円だった。



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被害者側に損害賠償をした従業員が、勤務先の会社に応分の負担を求めることができるか

2020.03.02
 仕事中の事故で損害賠償
 被害者側に損害賠償をした従業員が、勤務先の会社に応分の負担を求めることができるか
(2020.2.28最高裁二小判決福山通運事件)


(事件の概要)
 原告の女性は運送大手の福山通運のトラック運転手として業務中に死亡事故を起こし、被害者遺族に約1500万円の損害賠償をした。
(福山通運が保険に加入せずに自己資金で賠償する制度を採用していたことは経営判断と認めつつ、結果として女性が保険による支援を受けられなかった。)
 本件訴訟では、会社が被害者に賠償した後で従業員に負担を求める「求償権」が認められているが、今回、逆に「使用者への逆求償権」があるかが争点だった。

判決要旨

1 最高裁第二小法廷は2020.2.28判決は、「民法715条の趣旨からすれば、使用者は第三者に対する賠償義務だけでなく、被用者との関係でも損害を負担する場合がある」とし、どちらが先に被害者に賠償したかによって、会社の負担の大きさが異なるのは相当でないと判示。

2 以上,被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え,その損害を賠償した場合には,被用者は,上記諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について,使用者に対して求償することができるものと解すべきである。


[編注・コメント]
 三浦守裁判官(検察官出身)は補足意見で「運送事業者は許可を受ける際、全ての車で保険に加入するなどして十分な損害賠償能力を持つことが求められる」と指摘。こうした備えは事故被害者の救済だけでなく、従業員の負担軽減のためにも重要だとした。妥当である。



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自賠責〜政府の求償額と被害者未塡補損害の競合で「被害者優先すべき」(最高裁)

2018.10.10
自賠責〜
政府の求償額と被害者未塡補損害の競合で
「被害者優先すべき」(最高裁)



 被害者の男性は2013年、仕事でトラックを運転中に軽自動車と衝突し、後遺障害が残った。労災保険から計約908万円の給付を受けたが、なお損害が残っているとして、加害者が自賠責保険に加入していた東京海上日動火災保険に対し、約580万円の支払いを求めて提訴していた事案。

 最高際第一小法廷は、2018.9.27判決で、「被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害(以下「未塡補損害」という。)について直接請求権を行使する場合は,他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され,被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は,国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である。」と判示して、保険金344万円を被害者に支払うよう命じた二審、東京高裁の判断を維持した。(遅延損害金の算定についての審理を同高裁に差し戻し)。


[編注、コメント]

 従来、被害者と政府の請求額の合計が加害者の自賠責保険の保険金を超える場合、保険会社はそれぞれの請求額に応じて保険金を案分する運用をしてきたが、取扱変更が必要となる。
(判決文は最高裁URL)を直接参照してください。
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/011/088011_hanrei.pdf



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労働契約法20条正社員と有期契約社員との処遇格差をめぐる最高裁判決

2018.06.16
2018.6.1、労働契約期間の定めの有無による不合理な労働条件格差を禁じた労働契約法20条の判断をめぐって争われた2事件に対する最高裁判決が示された。
以下は、2事件の判決概要です


1 長澤運輸事件
 (正社員と職務内容が同じ定年後再雇用者に対する賃金・賞与格差の違法性が争われた事件)

最高裁第二小法廷
判決のポイント


1) 事業主は,高年齢者雇用安定法により,60歳を超えた高年齢者の雇用確保措置を義務付けられており,定年退職した高年齢者の継続雇用に伴う賃金コストの無制限な増大を回避する必要があること等を考慮すると,定年退職後の継続雇用における賃金を定年退職時より引き下げること自体が不合理であるとはいえない。また, 定年退職後の継続雇用において職務内容やその変更の範囲等が変わらないまま相当程度賃金を引き下げることは広く行われており,被上告人が嘱託乗務員について正社員との賃金の差額を縮める努力をしたこと等からすれば,上告人らの賃金が定年退職前より2割前後減額されたことをもって直ちに不合理であるとはいえず,嘱託乗務員と正社員との賃金に関する労働条件の相違が労働契約法20条に違反するということはできない。

2) 労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断する際に考慮する事情として,「その他の事情」を挙げているところ,その内容を職務内容及び変更範囲に関連する事情に限定すべき理由は見当たらない。有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは,労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たると解するのが相当である。

3) 有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては,両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく,当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である。

最高裁判決文
→ http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87785





2 ハマキョウレックス事件
 (正社員と職務内容が同じ契約社員に対する諸手当の格差について違法性が争われた事件)

最高裁第二小法廷
判決のポイント


1 労働契約法20条は,労働条件の相違が同条に違反する場合であっても,同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではない。

2 同条にいう「期間の定めがあることにより」とは,労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当である。

3 個別手当の判断においては以下の判決
  イ 契約社員に対して不支給または支給格差が設けられていた無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当について不合理な労働条件の相違とした高裁判決を支持。
  ロ 高裁判決で棄却された皆勤手当の格差について、最高裁は「出勤する者を確保することの必要性については、職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではない」として不合理な格差と認定。

最高裁判決文
→ http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87784


[編注、コメント]

 「高年齢者雇用安定法」が施行され、雇用社会において(雇用優先、処遇任意の大枠方針が)先行実施されている中での最高裁判決であるから、当該法律の違法性に踏み込むことはできず、(言ってみれば)最高裁らしい判決だ。

 全体としての処遇差については不合理性を認めないとする前提の元で、各手当については、
 正社員と有期契約社員で、当該手当を個別に判断して、支給理由や趣旨から両者の間に差異を設ける理由がないようなものは、「不合理」とする判断する。
 波風の立たない最高裁判決であった。



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「イビデンセクハラ対応事件」親会社に信義則違反はない!(最高裁)

2018.04.12
「イビデンセクハラ対応事件」
親会社に信義則違反はない!
(最高裁)


判決日 平成30年2月15日
事件 イビデンセクハラ対応損害賠償請求事件
事件番号 平成28(受)2076
最高裁第一小法廷


(事実関係)
被上告人(被害者)は、イビデン㈱(親会者)の子会社㈱イビデン・キャリアテクノ(勤務先会社)の契約社員として、同じ事業場内で就労していた他の子会社の従業員(加害者)から、繰り返し交際を要求され、自宅に押し掛けられるなどしたことにつき、勤務先会社の上司に被害相談をしたが、何らの措置も講じてくれないことから、勤務先会社を退職した。
(なお)、被害者の退職後も加害者の付きまとい行為が続いたことから、被害者の元同僚で勤務先会社に勤務する契約社員が、親会社の相談窓口に対し、被害者及び加害者から事実確認等の対応をしてもらいたいと依頼した。
これに対して、親会社では、子会社を介して加害者の聞き取り調査は行ったが、子会社から事実が存在しないとの報告を受けたことを踏まえて、被害者に対する事実確認を行わなかった。
親会社の対応について、信義則上の義務違反の有無が争われた。



(最高裁判決のポイント)
→ 破棄自判、親会社が逆転勝訴

彼上告人は(勤務先会社に雇用されその指揮命令の下で労務を提供していたというのであり、)上告人が彼上告人に対し指揮命令権を行使する立場にあったとか、被上告人から実質的に労務の提供を受ける関係にあったとみるべき事情はない。
以上によれば、・・・勤務先会社が本件付随義務に基づく対応を怠ったことのみをもって、親会社の被害者に対する信義則上の義務違反があったものとすることはできない。
もっとも、

親会社上告人には、「本件グループ会社の事業場内で就労した際に、法令等違反行為によって被害を受けた従業員等が、本件相談窓口に対しその旨の相談の申出をすれば、上告人は、相応の対応をするよう努めることが想定されていた(から)、・・申出の具体的状況いかんによっては、当該申出をした者に対し、当該申出を受け、体制として整備された仕組みの内容、当該申出に係る相談の内容等に応じて適切に対応すべき信義則上の義務を負う場合があると解される。」
しかし、本件は結論として、(在職中の行為は相談申立をしておらず、)また、申立のされた退職後の行為は、被上告人が既に退職し加害者と同じ職場では就労しておらず、行為から8ヶ月以上が経過していたことから、上告人の信義則の義務違反が否定されるところとなったもの。


[編注、コメント]

親会社が子会社及び被害者に対し、「指揮命令権を行使する立場にあったとか、被上告人から実質的に労務の提供を受ける関係にあったとみるべき事情はない。」と認定した以上、関連義務違反は生じない、という結論になる。
むしろ、本件では、最高裁が、「(本件)申出の具体的状況いかんによっては、当該申出をした者に対し、当該申出を受け、体制として整備された仕組みの内容、当該申出に係る相談の内容等に応じて適切に対応すべき信義則上の義務を負う場合があると解される。」と判示したことの方が注目される。



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