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管理職のセクハラ行為に警告なく懲戒しても許される場合がある[最高裁]

2015.02.27
平成27.2.26最高裁一小判決
大阪市の水族館「海遊館」事件
「被害者が明確な拒否の姿勢を示していなくとも
「会社から処分事案に係る個別直接的な警告・注意等を受けていなかったとしても」
セクハラ行為を行った管理職に、「しんしゃく」する事情があったとは言えない!





事案の概要

 事務室内では,サービスチームの責任者の役割を担うマネージャーである被上告人X1,同チームの複数の課長代理の1人である被上告人X2,売上管理等担当の女性従業員A及び拾得物担当の女性従業員Bら併せて二十数名の従業員が勤務していた。

 事件は、従業員Aらが退職に際し会社にセクハラ被害を申告した。これを受けて会社は、審査会を開いた上で、X1,X2の行為の事実を確認、出勤停止の懲戒処分を科し、その結果として、両名の降格が決まった。
 両名はこれを不服として提訴した。
 大阪高裁は、平成26.3.28
 「被上告人らが,従業員Aから明確な拒否の姿勢を示されておらず,本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していたことや・・本件各行為について上告人から事前に警告や注意等を受けていなかったことなどを考慮すると,出勤停止処分は,重きに失し,社会通念上相当とは認められず無効。(出勤停止)処分を受けたことを理由としてされた降格もまた無効である。」と判示していた。

 最高裁判断

 これに対して最高裁第一小法廷は、平成27.2.26判決にて、


1) 仮に「明確な拒否の姿勢を示されておらず,本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していたこと」という事情が会ったとしても、そのことをもって被上告人らに有利にしんしゃくすることは相当ではない

2) 管理職である被上告人らにおいて,セクハラの防止やこれに対する懲戒等に関する上告人の方針や取組を当然に認識すべきであったといえることに加え,・・1年余にわたり行為を継続していたこと,被害の申告を受ける前の時点において,警告や注意等を行い得る機会があったとはうかがわれないことからすれば、経緯について被上告人らに有利にしんしゃくし得る事情があるとはいえない

 したがって、処分は懲戒権を濫用したものとは言えず有効。(また、当該処分に基づく降格も合理性を有するものということができる。)。


 (会社のセクハラ行為に係る取組み等)

 同判決で最高裁が認定した事実等


 「上告人(会社)においては,職場におけるセクハラの防止を重要課題と位置付け,セクハラ禁止文書を作成してこれを従業員らに周知させるとともに,セクハラに関する研修への毎年の参加を全従業員に義務付けるなど,セクハラの防止のために種々の取組を行っていたのであり,被上告人らは,上記の研修を受けていただけでなく,上告人の管理職として上記のような上告人の方針や取組を十分に理解し,セクハラの防止のために部下職員を指導すべき立場にあったにもかかわらず,派遣労働者等の立場にある女性従業員らに対し,職場内において1年余にわたり上記のような多数回のセクハラ行為等を繰り返したものであって,その職責や立場に照らしても著しく不適切なものといわなければならない。」


[参考]

X1,X2の具体的なセクハラ行為の内容

(1) 本件各行為の内容についてみるに,

被上告人X1

被上告人X1は,営業部サービスチームの責任者の立場にありながら,従業員Aが精算室において1人で勤務している際に,同人に対し,自らの不貞相手に関する性的な事柄や自らの性器,性欲等について殊更に具体的な話をするなど,極めて露骨で卑わいな発言等を繰り返すなどしたもの

被上告人X1の行為

従業員Aが精算室において1人で勤務している際,同人に対し,
○ 自らの不貞相手の年齢や職業の話をし,不貞相手とその夫との間の性生活の話をした。(複数回)
○ 「俺のん,でかくて太いらしいねん。やっぱり若い子はその方がいいんかなあ。」と言った。
○ 「夫婦間はもう何年もセックスレスやねん。」,「でも俺の性欲は年々増すねん。なんでやろうな。」,「でも家庭サービスはきちんとやってるねん。切替えはしてるから。」と言った。(複数回)
○ 不貞相手が自動車で迎えに来ていたという話をする中で,「この前,カー何々してん。」と言(った),
○ 被上告人自らの不貞相手と推測できる女性の写真をしばしば見せた。
○ 従業員Aもいた休憩室において,水族館の女性客について,「今日のお母さんよかったわ…。」,「かがんで中見えたんラッキー。」,「好みの人がいたなあ。」などと言った。


被上告人X2

被上告人X2は,上司から女性従業員に対する言動に気を付けるよう注意されていたにもかかわらず,従業員Aの年齢や従業員Aらがいまだ結婚をしていないことなどを殊更に取り上げて著しく侮蔑的ないし下品な言辞で同人らを侮辱し又は困惑させる発言を繰り返し,派遣社員である従業員Aの給与が少なく夜間の副業が必要であるなどとやゆする発言をするなどしたもの

被上告人X2の行為

従業員Aに対し,
○ 「いくつになったん。」,「もうそんな歳になったん。結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで。」と言った。
○ 「30歳は,二十二,三歳の子から見たら,おばさんやで。」,「もうお局さんやで。怖がられてるんちゃうん。」,「精算室に従業員Aさんが来たときは22歳やろ。もう30歳になったんやから,あかんな。」などという発言を繰り返した。
○ 「30歳になっても親のすねかじりながらのうのうと生きていけるから,仕事やめられていいなあ。うらやましいわ。」と言った。
○ 「毎月,収入どれくらい。時給いくらなん。社員はもっとあるで。」,「お給料全部使うやろ。足りんやろ。夜の仕事とかせえへんのか。時給いいで。したらええやん。」,「実家に住んでるからそんなん言えるねん,独り暮らしの子は結構やってる。MPのテナントの子もやってるで。チケットブースの子とかもやってる子いてるんちゃう。」などと繰り返し言った。
従業員A及び従業員Bに対し,
○ 具体的な男性従業員の名前を複数挙げて,「この中で誰か1人と絶対結婚しなあかんとしたら,誰を選ぶ。」,「地球に2人しかいなかったらどうする。」と聞いた。
○ 被上告人X2は,セクハラに関する研修を受けた後,「あんなん言ってたら女の子としゃべられへんよなあ。」,「あんなん言われる奴は女の子に嫌われているんや。」という趣旨の発言をした。


 [編注、コメント]

 「被害者が明確な拒否の姿勢を示していなくとも」
 「会社から処分事案に係る個別直接的な警告・注意等を受けていなかったとしても」
  会社がセクハラの防止に関して、明確な方針を示し、社員研修等を徹底している場合、ましてや、セクハラ行為を行ったのが管理職であるようなケースにおいては、ことさらに背景事情について管理職に有利に「しんしゃく」する必要なない!とする判決だ。
 この判決は一見、当り前の指摘をしている変容もない判決のようにも思えるが、
 セクハラを巡る裁判の被害認定や人事労務管理の現場実務において、極めて大きな影響を及ぼす可能性がある。

 なお,最高裁判決文全文は以下のURLから参照できます。
 → http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84883



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