最高裁が新判断 「労災保険で療養中も、打切補償を支払えば解雇できる」
2015.06.09
最高裁 「労災保険で療養中も、打切補償を支払って解雇できる」
(専修大学事件)
2015.6.8、最高裁第二小法廷判決
「労災保険法12条の8第1項1号の療養補償給付を受ける労働者が,療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には,労働基準法75条による療養補償を受ける労働者が上記の状況にある場合と同様に,使用者は,当該労働者につき,同法81条の規定による打切補償の支払をすることにより,解雇制限の除外事由を定める同法19条1項ただし書の適用を受けることができるものと解するのが相当である。」
[編注、コメント]
(事件)
本件は,労災保険法に基づく療養補償給付を受けている労働者が、療養開始後3年を経過してもその疾病が治らないことから,会社側が平均賃金の1200日分相当額を支払った上で当該労働者を解雇した。
これに対して労働者は、これは、労働基準法81条が規定する「同法75条の規定によって補償を受ける労働者」に該当せず,上記解雇は同法19条1項ただし書の場合に該当しないとして解雇無効を主張していた。
原審は、「労働基準法81条が、労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者については何ら触れていないこと等からすると,労働基準法の文言上,労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者が労働基準法81条にいう同法75条の規定によって補償を受ける労働者に該当するものと解することは困難である。」として、解雇が労働基準法19条1項に違反し無効であるとしていた。
これに対する最高裁第二小法廷判断は、
「原審の判断を完全に否定する逆転判決。(※実は、原審判断は、行政解釈を含む実務上の一致した取扱いであったが、これを180度くつがえしたことになる。)」
「なお、最高裁は、その場合でも解雇は、労働契約法16条にいう「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効」であるから、この観点からの審理は不可欠である」ことを付言している。
この判決によって、業務上災害で療養開始後3年を経過しても治らない場合の(打切補償と解雇のについて)実務運用が激変することは必定だろう。
判決文は、以下のサイトから直接参照できる。
→ http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/148/085148_hanrei.pdf
【参考関連条文】
労災保険法
第12条の8
第7条第1項第1号の業務災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 療養補償給付
二 休業補償給付
三 障害補償給付
四 遺族補償給付
五 葬祭料
六 傷病補償年金
七 介護補償給付
2~4(略)
労働基準法
第75条
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
労働基準法
(打切補償)
第81条
第75条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。
労働基準法
(解雇制限)
第19条
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
労働契約法
(解雇)
第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労務安全情報センター
http://labor.tank.jp

(専修大学事件)
2015.6.8、最高裁第二小法廷判決
「労災保険法12条の8第1項1号の療養補償給付を受ける労働者が,療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には,労働基準法75条による療養補償を受ける労働者が上記の状況にある場合と同様に,使用者は,当該労働者につき,同法81条の規定による打切補償の支払をすることにより,解雇制限の除外事由を定める同法19条1項ただし書の適用を受けることができるものと解するのが相当である。」
[編注、コメント]
(事件)
本件は,労災保険法に基づく療養補償給付を受けている労働者が、療養開始後3年を経過してもその疾病が治らないことから,会社側が平均賃金の1200日分相当額を支払った上で当該労働者を解雇した。
これに対して労働者は、これは、労働基準法81条が規定する「同法75条の規定によって補償を受ける労働者」に該当せず,上記解雇は同法19条1項ただし書の場合に該当しないとして解雇無効を主張していた。
原審は、「労働基準法81条が、労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者については何ら触れていないこと等からすると,労働基準法の文言上,労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者が労働基準法81条にいう同法75条の規定によって補償を受ける労働者に該当するものと解することは困難である。」として、解雇が労働基準法19条1項に違反し無効であるとしていた。
これに対する最高裁第二小法廷判断は、
「原審の判断を完全に否定する逆転判決。(※実は、原審判断は、行政解釈を含む実務上の一致した取扱いであったが、これを180度くつがえしたことになる。)」
「なお、最高裁は、その場合でも解雇は、労働契約法16条にいう「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効」であるから、この観点からの審理は不可欠である」ことを付言している。
この判決によって、業務上災害で療養開始後3年を経過しても治らない場合の(打切補償と解雇のについて)実務運用が激変することは必定だろう。
判決文は、以下のサイトから直接参照できる。
→ http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/148/085148_hanrei.pdf
【参考関連条文】
労災保険法
第12条の8
第7条第1項第1号の業務災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 療養補償給付
二 休業補償給付
三 障害補償給付
四 遺族補償給付
五 葬祭料
六 傷病補償年金
七 介護補償給付
2~4(略)
労働基準法
第75条
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
労働基準法
(打切補償)
第81条
第75条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。
労働基準法
(解雇制限)
第19条
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
労働契約法
(解雇)
第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労務安全情報センター
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