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裁判例の記事一覧

IBMのC評価解雇は「解雇権濫用」、一方、ロックアウト是認(東京地裁)

2016.04.02
IBMのC評価解雇は「解雇権濫用」
一方、ロックアウト是認
(東京地裁)


 日本IBM正社員として働いていた4都県の43~59歳の男女5人は、2012年7月~2013年6月に、1~2週間後の解雇を通告され、出社を禁じられた。
 その際自主退職すれば退職金を増やすと提案されたが拒否し、解雇された。

 東京地裁は2016.3.28、5人の解雇は権利の乱用で無効とする判決を出した。
 判決では、5人に一定の業績不良や問題行動があったと認める一方、「適性のある業種に配転したり、解雇の可能性を伝えて業績改善の機会を与えたりせずに解雇した」と指摘。同社が根拠とした評価方式については「あくまで相対評価で、低評価が続いても、解雇に足る業績不良と認められるわけではない」と判示。解雇は無効だと結論づけた。

 ※※※ 原告側によると、同社では社員の評価をABCの3段階の相対評価で実施しており、Cの評価が付けられると年収が15%カットされるという。Cの評価が続けば、勤続年数にかかわらず給与が初任給以下になる場合もある。全従業員のうち、何割がC評価をされているかも不明だという。※※※

 本件訴訟では、原告は、解雇予告とともに出社を禁じる「ロックアウト解雇」と呼ばれる手法が違法として損害賠償も求めたが、判決は「会社と対立し機密情報を漏らす恐れがあり、違法性はない」との理由でこれを退けた。


 東京地裁内の会見で、原告代理人の水口洋介弁護士は、「相対評価による解雇が認められないという判断は高く評価できる。アメリカ流解雇自由に対し、日本の解雇乱用法理で歯止めをかけた画期的判決だ」と指摘しました。


○ 以上は、朝日、日経、産経、共同等各紙の記事を参照し、当方の責任でまとめました[労務安全情報センター]




 [編注、コメント]

 業績が上がっていないなど成績の相対評価[結果]は、解雇理由としてどうか?
 東京地裁は、日本的な感覚では、まあ当然すぎる理屈をもって「解雇権濫用」判決を申し渡した訳だが、労働法的には、むしろ、ロックアウト解雇が是認されていることが気になった。しかも、是認理由が「会社と対立し機密情報を漏らす恐れがあり、違法性はない」というのでは、納得し難い。

                                                         


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労働者が自由な意思で行った退職金不利益変更への同意か疑問がある(最高裁判決)

2016.02.26
合併に伴う退職金不利益変更への書面同意
労働者が自由な意思で行った同意か疑問


2016.2.19最高裁第2小法廷判決
最高裁判決退職金


(以下は毎日新聞2016.2.19記事から)
タイトル「賃金の不利益、事前説明を」最高裁差し戻し

本文
 「勤務先の合併による労働条件の変更で退職金を大幅に減額されたとして、信用組合の元職員らが合併先に減額分の支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は19日(注:2016.2.19)、「賃金や退職金の不利益変更に対する労働者の同意は、事前に具体的に内容を説明し、労働者の自由な意思を得る必要がある」との初判断を示した。その上で元職員側を敗訴とした2審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。元職員側が逆転勝訴する可能性がある。経営者側が賃金や退職金をカットする場合、より丁寧な情報提供を求めたと言えそうだ。

 訴訟を起こしたのは合併で解散した信組の元職員ら。合併で退職金の規定が変更され、著しく減額されたとして合併先の山梨県民信用組合(甲府市)に支払いを求めた。元職員らは規定変更の同意書に署名押印しており、同意があったと言えるかどうかが争われた

 小法廷は「労働者は同意の基礎となる情報を収集する能力に限界がある。署名押印があったとしても、労働者への事前の情報提供の内容などに照らして判断すべきだ」と指摘。「自己都合退職の場合には支給額が0円となる可能性が高くなることなど、具体的な不利益の程度を説明する必要があった」などとして、審理が尽くされていないと判断した。(毎日新聞)」


(※参考説明)
 (以下は日本経済新聞記事から)

 「判決によると、元職員らは2003年に山梨県民信用組合と合併した旧峡南信用組合の出身。合併後に退職金がゼロにされたとして、従来の基準の総額8千万円の支払いを求めて提訴した。
 一審・甲府地裁と二審・東京高裁は、退職金を大幅に減らす内規変更の同意書に署名押印があるとして請求を棄却。元職員側が上告していた。
(日本経済新聞)」



 [編注、コメント]

 従来の基準の総額8千万円の退職金が、合併後は一挙に「ゼロ」に!。普通なら「ok署名」はしないだろうに、元職員らは規定変更の同意書に署名押印しているのは、不思議?だ、何故だ?
 最高裁は、こうした素朴な疑問に答えたのだろう。(私的感想ですが、法律家の持つこの感覚、悪くないと思いました。)
 「同意」とは何か。
 改めて考えてみるいいチェンスになるかも知れない。

 最高裁ホームページに掲載されている判決文概要は以下のURLから参照出来ます。
 →PDF11ページ http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/681/085681_hanrei.pdf



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育児休業取得で昇給なしは違法(最高裁判決)

2015.12.26
育児休業取得で昇給なしは違法(最高裁判決)


以下、時事通信2015.12.18記事から

記事タイトル=育休で昇給なし違法確定=男性看護師、3カ月取得-最高裁
記事本文

 「3カ月の育児休業を理由に昇給や昇格が認められないのは違法として、京都市の三尾雅信さん(45)が看護師として勤務していた病院側を相手に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は16日付で、病院側の上告を退ける決定をした。病院側に約24万円の支払いを命じた二審大阪高裁判決が確定した。

 育児介護休業法は、育児休業を理由に不利益な扱いをすることを禁じている
 三尾さんは京都市の医療法人稲門会が運営する病院に2003~13年まで勤務。このうち、10年9~12月に育休を取得した。しかし、病院側は育休を3カ月以上取ると翌年度は職能給を昇給させないという就業規則があることを理由に11年度の昇給を見送り、12年度の昇格試験の受験資格も認めなかった。
 一審京都地裁は昇格の機会を与えなかったことだけを違法として15万円の支払いを命じたが、二審は昇給させなかったことも違法と判断。規則について「育児休業を取得する者に無視できない経済的不利益を与え、取得を抑制させる」と批判した

 医療法人は「現在は制度を変更しており、育休取得による不利益はない」と話した。(2015/12/18-19:31)」





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ワタミ過労自殺事件の和解-1億3365万円、「注目の和解条項」

2015.12.19
ワタミ過労自殺事件の和解
和解金1億3365万円
「注目の和解条項」


 (和解成立2015.12.8)

 居酒屋大手「和民」で働いていた森美菜さん(当時26歳)が過労自殺したのは会社側の責任だとして、遺族らがワタミと当時の社長の渡辺美樹参院議員(自民)などに約1億5300万円の損害賠償を求めた訴訟は2015.12.8日、東京地裁(吉田徹裁判長)で和解が成立。
 和解内容は、「被告側が業務に起因する自殺であると認めて謝罪したうえで1億3365万円を支払い、労働時間の正確な把握などの再発防止策を取ることで合意した」もの。

 注目の和解条項ですがその概要は、次のようなもののようです。

 (NPO法人労働相談センタースタッフ日記
  http://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/24db57724286776c02b7459ab858c4f9 に和解条項が掲載されています。)




和解条項

1 被告会社らの業務が原因により死亡したことの確認
2 法的責任の確認
3 被告らの謝罪
4 再発の防止等
  被告らは、被告ワタミの従業員に対し、本件事件の和解の趣旨を十分に説明するとともに、労働基準法及び労働安全衛生法を遵守し、従業員が長時間労働や過重な心理的負荷を負わせる過重な業務に従事することを防止するとともに、別紙記載の再発防止策を行い、従業員の労働環境、健康状態に配慮し、精神疾患発生の予防に努める

5 本和解条項のホームページへの掲載
  被告ワタミ及び被告渡邉美樹は、インターネット上のホームページ冒頭に、本和解条項第1項乃至第4項全文(別紙過重労働再発防止策を含む)を、本和解成立の日から10日間が経過した日から3か月間掲示し、その後9か月間は被告ワタミはホームページの「お知らせ」欄の冒頭に、被告渡邉美樹は、ホームページの「新着情報」欄の冒頭に掲示して周知する。

6 未払い賃金等の支払=被災者の未払い残業手当39万2137円及び控除金2万4675円として、金41万6812円の支払義務があることを認める。

7 損害賠償金の支払義務=金1億3365万円の支払義務があることを認める



別紙  過重労働再発防止策

1 従業員の実労働時間を、正確かつ適正に記録し、実労働時間と異なる時間が就業時間として記録されることを徹底して防止する
  実労働時間は、始業時刻、終業時刻、休憩時間をタイムカード等に正確かつ厳格に記録することにより、適正なものにするよう努める。また、勤務地と居宅が離れていることにより、深夜帰宅が困難となる事態を防止するために、人事部門が定期的に実態を調査のうえ、不要な事業場在場時間を撲滅するように努める。

2 1か月の実労働時間について、36協定(労働基準法第36条に関する労使協定)の定めに従い、従業員が定められた上限時間を超えて労働することを防止する。また、36協定の内容については、過重労働を防止するため、更新時に、現行の時間外労働時間に関する規定(1か月45時間、特別延長は1か月75時間で6回、年間720時間)を低減するように努める

3 労働基準監督署から、事業場に関して是正勧告があった場合には、是正勧告及び是正報告等の内容を全従業員に周知するとともに、その内容をコンプライアンス委員会に直ちに報告する。

4 研修会、新卒ボランティア活動及び会社が出席を実質的に指示するもの並びに課題作成等会社がその作成及び提出を指示するものに要した時間は、適正に業務時間として記録し、残業手当を適正に支払うとともに、長時間労働を防止する
  また、平成20年度から平成24年度までに、その当時のワタミフードサービス及び被告ワタミに入社した新卒社員全員に対し、過去分として一律金2万4714円を支払う。
  なお、該当者のうち退職した社員の、所在のわかる者には書面で連絡したうえ、所在がわからない者への支払いを確保するために、被告ワタミは、被告ワタミのインターネットのホームページ上に、本和解条項本文第5項に記載される和解条項の記載と合わせて、上記条件に該当する社員であった者から申し出があったときには上記金員の支払いをする(但し、本和解条項をホームページに掲載する期間の最終日までに、受領の申し出のない者を除く)旨を掲示する。

5 平成20年度から平成27年度までの間にその当時の被告ワタミ及びワタミフードサービス(平成27年度はワタミフードシステムズ株式会社)に入社した新卒社員につき、賃金から控除した本購入代金等の返還として、該当する新卒社員全員に対し、それぞれ金2万4675円を支払う
  なお、該当者のうち退職した社員の、所在のわかる者には書面で連絡したうえ、所在がわからない者への支払いを確保するため、被告ワタミは、被告ワタミのインターネット上のホームページに、本和解条項本文第5項に記載される和解条項の記載と合わせて、上記条件に該当する社員であった者から申し出があったときには上記金員の支払いをする(但し、本和解条項をホームページに掲載する期間の最終日までに、受領の申し出のない者を除く)旨を掲示する。
  また、社員が研修に使用する書籍や手帳を購入する際の代金収納方法については、社員の自由意思を阻害しないように、別途、検討を行う。

6 正社員を募集する際には、被告ワタミは、入社を希望する者らに対し、実労働時間等、休日・休暇の取得状況、退職等の離職率、費用負担の詳細、給与の当月分の支払いを翌月25日とする取扱い(新規に入社した社員の最初の給与の支払いが翌月25日となること)等の就労実態を正確に説明する。
  また、正社員を募集する際には、基本給額と深夜手当金額を分けて提示する。

7 被告ワタミは、弁護士等の法律専門家、人事労務の専門家を半数以上含むコンプライアンス委員会を運営し、定期的に労働環境及び就労実態を調査・検証することにより、過重労働の再発防止に努める。コンプライアンス委員会は当該調査・検証の結果を文書とし、定期的に被告ワタミのホームページに掲載する。



 [編注、コメント]

 和解金額1億3365万円も、高額和解といえるものであり注目されるが、
 本件の発表内容が注目されたのは、その「和解内容」である。
 和解条項の4及び5
 例えば、5「被告ワタミ及び被告渡邉美樹は、インターネット上のホームページ冒頭に、本和解条項第1項乃至第4項全文(別紙過重労働再発防止策を含む)を、本和解成立の日から10日間が経過した日から3か月間掲示し、その後9か月間は被告ワタミはホームページの「お知らせ」欄の冒頭に、被告渡邉美樹は、ホームページの「新着情報」欄の冒頭に掲示して周知する。」とした部分などだ。
 ここで言及されている「別紙過重労働再発防止策」こそ、本件和解を特徴付けている。
 和解内容のホームページへの公表や原告の範囲を超えて、関係従業員に及んだ(及ぶ可能性のある)違法行為を償わせ又は防止しようというスタンスは、他の和解事件と一線を画するものと言えそうだ。



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最高裁が新判断 「労災保険で療養中も、打切補償を支払えば解雇できる」

2015.06.09
最高裁 「労災保険で療養中も、打切補償を支払って解雇できる」

(専修大学事件)
2015.6.8、最高裁第二小法廷判決
 「労災保険法12条の8第1項1号の療養補償給付を受ける労働者が,療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には,労働基準法75条による療養補償を受ける労働者が上記の状況にある場合と同様に,使用者は,当該労働者につき,同法81条の規定による打切補償の支払をすることにより,解雇制限の除外事由を定める同法19条1項ただし書の適用を受けることができるものと解するのが相当である。」



[編注、コメント]

(事件)
 本件は,労災保険法に基づく療養補償給付を受けている労働者が、療養開始後3年を経過してもその疾病が治らないことから,会社側が平均賃金の1200日分相当額を支払った上で当該労働者を解雇した。
 これに対して労働者は、これは、労働基準法81条が規定する「同法75条の規定によって補償を受ける労働者」に該当せず,上記解雇は同法19条1項ただし書の場合に該当しないとして解雇無効を主張していた。

 原審は、「労働基準法81条が、労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者については何ら触れていないこと等からすると,労働基準法の文言上,労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者が労働基準法81条にいう同法75条の規定によって補償を受ける労働者に該当するものと解することは困難である。」として、解雇が労働基準法19条1項に違反し無効であるとしていた。

 これに対する最高裁第二小法廷判断は、
 「原審の判断を完全に否定する逆転判決。(※実は、原審判断は、行政解釈を含む実務上の一致した取扱いであったが、これを180度くつがえしたことになる。)」
 「なお、最高裁は、その場合でも解雇は、労働契約法16条にいう「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効」であるから、この観点からの審理は不可欠である」ことを付言している。

 この判決によって、業務上災害で療養開始後3年を経過しても治らない場合の(打切補償と解雇のについて)実務運用が激変することは必定だろう。


 判決文は、以下のサイトから直接参照できる。
 → http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/148/085148_hanrei.pdf


【参考関連条文】

労災保険法
第12条の8
 第7条第1項第1号の業務災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 療養補償給付
二 休業補償給付
三 障害補償給付
四 遺族補償給付
五 葬祭料
六 傷病補償年金
七 介護補償給付
2~4(略)

労働基準法
第75条
 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。


労働基準法
(打切補償)
第81条
 第75条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。


労働基準法
(解雇制限)
第19条
 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない

2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。


労働契約法
(解雇)
第16条
 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。



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